西村賢太作品を読み進めます。
本書のご紹介
本書の著者は西村賢太さん。
本ブログでも、『一私小説書きの日乗 野性の章』、『苦役列車』、『痴者の食卓』を紹介済みです。
私小説(わたくししょうせつ)というのを読んだのは、多分、西村さんの作品が初めてだと思うのですが、正直、まだ面白さを理解できていません。
ただ、すぐに放棄するのももったいない気がするので、我が図書館にある限りの本は読んでみたいと思っています。
私が読んだのは文藝春秋版ですが、こちらは文春文庫版(キンドル)です。
本書を読んだ感想
本書には『棺に跨がる』、『脳中の冥路』、『豚の鮮血』、『破鏡前夜』の4編が収められています。
いずれも、主人公の貫多とその交際者で同棲相手でもある秋恵との些細なことからの衝突、貫多による秋恵への暴力、秋恵の負傷、貫多の後悔と逮捕に対する恐怖、秋恵への懺悔・卑下、秋恵の無視、一応の関係修復といったパターンです。
ただ、本作ではすぐに2人の仲は修復されません。
お人好しとも思える秋恵も、さすがに繰り返される暴行被害を受け、これまでなら数日で修復していた貫多との仲を修復しようとせず、これに貫多は動揺します。
まあ、発端は貫多のカツカレーの食べ方という端から見れば些細なことですから。
ただ、更なる膀胱被害を受け、家から追い出された秋恵は突如、家に戻ってきて、交際当初のような明るさ、健気さ、そして最高の笑顔をもって貫多に接してきます。
これに貫多は戸惑いつつも、素人女を服従し、その関係を継続したいという願望が満たされて満足するのです。
読んでいると、急変した秋恵の優しさがとても怖く感じるのですが。
そして、突如の別れが訪れます。
どうやら秋恵には「別の男と逢瀬」があったようですが、それを招いたのも全て貫多の自業自得。
さいごに
本書で、秋恵シリーズは終わるのでしょうか。
とにかく、極めて短気で自分勝手な貫多に付き合った懐の太さ、そして最終的に貫多を見切った先見の明は大したものです。
というか、まともな人なら貫多と付き合うこと自体あり得ないと思いますが。
兎に角、人は他人に依存する性分になっているのでしょうね。
それでムラが出来て、社会が出来て、国家が出来た訳ですし、貫多もその本能のとおりに秋恵に依存する訳です。
結局、痴話喧嘩を読まされている感がありますが、まあ面白かったです。
本書の文春文庫版(キンドル)です。
こちらもいずれ読むことになると思います。
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