西村さんの作品を読み続けます。
本書のご紹介
本書の著者は西村賢太さん。
本ブログでも、『一私小説書きの日乗 野性の章』と『苦役列車』を紹介済みです。
本書です。アマゾンでは「平成無頼派真骨頂の傑作私小説集」と紹介されていますね。
本書の概要と読んだ感想
○『人工降雨』
人はどんなに頑張っても性分を改めることは非常に困難のようです。
また、孤独が嫌でさびしいと感じる人は、つまらない相手にでも頼り依存してしまうんですね。
DVなどはなくなりそうにありません。
○『下水に流した感傷』
DVを敢行しつつ、一方で相手を愛おしくかけがえのない存在と思っているなんてあり得るのか、真剣に他人を愛したことがない自分には分かりません。
24歳までに4人、それから10数年間が空いたものの、本作に出てくる女性からも少なくとも恋愛の対象と認められた主人公は恵まれている気がします。
また、魚を逃し、自らも男をつくって主人公から去った女性のしたたかさは悪くないです。
○『夢魔去りぬ』
著者の父親が性犯罪を犯したため、著者ら残された家族は夜逃げ同然で町を去るわけですが、その当時通っていた学校で授業をするというテレビの企画が著者に持ちかけられます。
著者自身に何の非もないものの、当時の近隣住民、学校の教師、児童に多大な迷惑を掛けたと自責の念に駆られる著者は結局、依頼を受入れます。
土地を離れ、30年以上の時が流れてからの再訪。
本人にしか分からない苦悩や怯えを少しだけでも感じられた気がしました。
○『痴者の食卓』
土鍋が欲しいと言い出した彼女。
その彼女は実に10数年ぶりにできた交際者であり、日頃から世話になっていることもあって、主人公はしぶしぶですがこれを承諾します。
そして、その鍋を使った夕食のメニューも彼女に合わせます。
ただ、締めの段階となって、きしめんを買ってない、おじや用のご飯が用意されていないといったことで、結局著者は彼女に手を上げてしまうのでした。
まさにこういったものを私小説と呼ぶのでしょうね。
○『畜生の反省』
特になし。
○『微小崩壊』
他のカップルの喧嘩、しかも男が一方的に女性を叱責する様子を目の当たりにして、日頃の自分は罵声を上げるだけでなく暴力を振るう、さらに下らない男だと反省した主人公。
これを機に、彼女への接し方、怒りからの蛮行を改めます。
それに戸惑いながらも喜ぶ彼女ですが、生来の性格なのかちょっと相手に構わず調子に乗ってしまい、これで主人公の反省期間は終了。
再び暴力を振るって終わります。
さいごに
気弱なのに気が短く、相手が女性であれば強気で責め立て暴力も厭わない。
そんな主人公と、犠牲者となる彼女とのやりとりでした。
読後の感想は、正直ありません。
私には喧嘩する気力がありませんし(気は短いほうだと思いますが)、何より喧嘩する相手がいません。
それよりも、こんな短気で暴力的な主人公にも、数は少なけれどちゃんと彼女と言える存在があったことに敗北感を感じました。
引き寄せではありませんが、常日頃から欲しいと願うことが大切なのでしょうか。
西村作品はあと数作は読んでみたいと思います。
本書です。
芥川賞受賞作です。
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