【セミリタイア生活と読書】西村賢太『歪んだ忌日』を読んで

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 西村作品を読み続けます。

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本書のご紹介

本の写真

 

 本書の著者は西村賢太さん。

 本ブログでも、『一私小説書きの日乗 野性の章』『苦役列車』『痴者の食卓』、『棺に跨がる』を紹介済みです。

 私小説をしっかり読むのは西村作品が初めてで、今のところのめり込む感はありませんが、図書館に置いてある本だけでも全部読んでみたいと思っています。

 

 

 ちょっとお高くなっていますが、紙ベースの本が欲しい方はどうぞ。

本書の概要と読んだ感想

○『形影相弔』
 著者の藤澤清造への思い、執着を感じられる作品。
 メジャーな賞を受賞し多少金回りが良くなったものの、劇的なものではなく、散財を控え生来のために蓄えなくてはと考え始めていたところで敬愛する藤澤清造の自筆原稿が古書市に出品されるとの情報が入ります。
 すべて入手したい著者が、さて入札価格を幾らに設定するか。
 マイナーな藤澤の原稿なので高く無いはず。
 でも、著者のような藤澤を崇拝する者であれば、信じがたい値段を付けてくる可能性も否定できません。
 そのあたりの、ヒリヒリとする心境が面白かったです。


○『青痣』
 秋恵との出会い、同棲開始の様子が描かれています。
 久しぶりに得た、「素人の女体」である秋恵。
 昔で言う「天然」の秋恵。
 主人公に暴力を振るわれ、上辺の甘い言葉で満足じてしまうのが残念過ぎます。
 お嬢様育ちなのか、単に残念なのか分かりませんが、ただただ気の毒です。


○『膣の復習』
 秋恵に去られて傷心の貫多は買婬して気を紛らわせようとしますが、若い女性相手でも結局は秋恵のことで頭がいっぱいとなり、さらにダメージを負うのでした。
 女性の復習は怖いんですね。


○『感傷凌轢』
 突如、永く疎遠であった母親からの手紙を受け、戸惑いながらも思わず感傷に浸る貫多。
 母親に対して、かつて相当な暴力を振るい、金を巻き上げてきた貫多でしたが、それでも家族への思いを完全に断つことは難しいようです。
 その点は普通で安心しました。


○『跼蹐の門』
 跼蹐(きょくせき)とは「身の置き場所もない思いをすること」とのことです。
 中学卒業後、進学も就職もせず家を出て一人暮らしを始めた貫多。
 母からもらった手切れ金代わりの10万円も新居の費用としてすぐに消え、度々実家に戻っては母親の財布から金を抜き取ります。
 その貫多に珍しく労働意欲が湧くのですが、それは買婬すること。
 普通に進学して楽しい学生時代を送る同年代よりも早く男になりたかったのでした。
 そして、その軍資金を得るためのアルバイト先を見つけたのですが・・・。
 人はそんなに思うような生き方は出来ませんし、性格などを極めて困難ですね。


○『歪んだ忌日』
 貫多の敬愛する藤澤清造の祥月命日に関する話。
 藤澤の歿後弟子を自称する貫多がメジャーな賞を受賞したことで、清造忌に供養目的など全くない単なる興味本位だけの者が多数押し掛けるように貫多は困惑、憤激します。
 ただ、そんな貫多もただ歿後弟子と勝手に自称しているだけの存在。
 そんな自分にも憤りを感じるのでした。
 ひとり空回り気味に奔走していますが、それだけ打ち込める物があるのはある意味幸せかもしれません。

さいごに

 短編なので読むのは大変ではありませんが、面白いかというとそうではありません。

 今後もまだ西村作品を読み続けるかちょっと迷っています。

 


   

 ちょっとお高くなっていますが、紙ベースの本が欲しい方はどうぞ。

 

 藤澤清造の作品は一度読んでみたいですね。

 

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